シミュレーション技術開発室
シミュレーション技術開発室では計算科学技術を活用した原子力分野におけるシミュレーション技術(材料・物性計算、環境動態シミュレーション)の開発を行っています。
研究トピックス
2023年
- 2023.09.15
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水素による鉄鋼材料の脆化に関する日本製鉄、上智大との共著論文がInternational Journal of Hydrogen Energyに掲載されました。
- 2023.06.01
- 2023.04.01
- 2023.03.24
- 2023.03.17
- 2023.03.08
メンバー
- 板倉 充洋
- 山口 正剛
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マネージャー, research map
- 鈴土 知明
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再雇用職員, research map
- 海老原 健一
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研究主幹, research map
- 山田 進
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研究主幹, research map
- 志賀 基之
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研究主幹, research map, Google Scholar
- 中村 博樹
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研究主幹, research map
- 奥村 雅彦
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研究主幹, research map
- 佐々 成正
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研究員, research map
- 永井 佑紀
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研究副主幹, research map, Google Scholar
- 山口 瑛子
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研究員, research map
- 金 敏植
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研究員, research map
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トムセン ボー
Bo Thomsen -
研究員, research map
- 小林 恵太
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研究員, research map
研究テーマ
大規模高精度原子シミュレーション技術の開発
福島第一原発の廃炉作業や、新型炉の設計においては、原子炉構造材料や燃料などの物性値が必要となります。これらの物質について高温など実験が困難な環境での特性を評価するために、最新の計算科学技術を用いた物性評価手法の研究を行っています。
◎機械学習分子動力学によるセシウム吸着挙動の解明
原子炉格納容器内部のコンクリートへのセシウム吸着を調べるため、セメントに対するセシウムの吸着メカニズムを調べた結果を示しています。 精密な第一原理計算をもとに機械学習分子動力学ポテンシャルを構築し、大規模な計算によってコンクリート中のセシウムイオン拡散機構を解明する研究を行なっています。
◎機械学習分子動力学による核燃料の熱物性評価
機械学習を活用した原子シミュレーションで二酸化トリウムの高温物性を高精度に再現しました。
◎機械学習を効率的に自動的に行う技術
機械学習による量子シミュレーションの高速化。物性計算に必要な位相空間でのサンプリングの模式図を示しています。通常はわずかに異なる状態を次々と作っていき、その都度膨大な計算を行ってサンプリングを行いますが、サンプリングに必要な量子計算の結果を機械学習し 代理モデルを用いて位相空間の遠く離れた場所を次の状態の候補として選び、その後に厳密な量子計算を行い状態を移ることでサンプリングの効率を劇的に向上できます(NAGAI et al. Physical Review B, 96 161102.)。右図は機械学習によって得られた分子動力学ポテンシャルを 用いて、通常の量子計算では計算が困難な超伝導体の有限温度におけるフォノン計算を行った例を示しています。
◎オープンソースコード「PIMD」
通常の第一原理計算では扱えない、原子核の量子効果や、レアイベントのシミュレーションなど、高精度な量子計算に必要となる様々な計算手法を扱えるオープンソースソフトウェアPIMDを公開しています。
原子力材料の脆化モデル開発
大規模な第一原理計算や分子動力学シミュレーションを用いて原子力材料の脆化の原因となる、粒界面や転位、照射欠陥の特性について原子スケール、フェムト秒スケールの実験では観察できないダイナミクスや相互作用を明らかにし脆化機構を解明する研究を行っています。
◎液体金属脆化
これまで規則性が見出されなかった脆化する固体ー液体金属の組み合わせを、基礎的な物性値によって分類可能としました。
◎き裂進展
鉄のへき開ではエネルギーの低い(110)面でなく(100)面が割れやすい実験事実について、(110)面のき裂は転位を放出しやすく割れにくいことが原因であることを分子動力学計算で発見しました。
環境動態研究
最新の計算科学手法を駆使し、福島県帰還困難区域などにおける放射性元素の今後の推移や被ばく影響を評価する研究を行っています。
◎空間線量の詳細計算
三次元空間線量評価システム「3D-ADRES」を開発し、衛星写真、地形及び標高データなどリモートセンシングデータを用いて福島県内の任意の地点の3次元モデルを作成し、最新の知見に基づいた空間線量の計算を行っています。 右図では実測で観測されている森林周辺の局所的に高い空間線量や舗装道路での低い空間線量が計算で再現されていることを示しています。
Map imagery (C) DigiGlobe Inc., NTT Data, Google & Zenrin 2018
◎森林の空間線量評価・予測
森林研究・整備機構森林総合研究所及び筑波大学との共同研究により、森林を表すモデルを構築し、放射性物質から放出されるガンマ線が、どのように森林内の土壌や樹幹及び枝葉に散乱され減衰するのかをシミュレーションより明らかにしています。 2015年以降、森林内の空間線量率のほとんどが森林土壌の上部5cm内にある放射性物質から来るガンマ線に由来することが分かりました(下図)。
◎ラジウムの環境動態
ラジウムはウランなどから生成するため環境汚染問題を引き起こす一方、近年ではがん治療薬としても利用されている重要な元素です。 しかし放射性同位体のみ存在するため実験が難しく、分子レベルの基礎的知見が不足していました。 本研究では世界初となる水和ラジウムの広域X線吸収微細構造(EXAFS)測定によってラジウム-水の距離や水分子の配位数を明らかにするとともに、大規模シミュレーションによってより詳細な静的特性や動的特性を解明することに成功しました。
住所
国立研究開発法人 日本原子力研究開発機構 システム計算科学センター
〒277-0871 千葉県柏市若柴178-4-4